「この章の最後に肉や大豆・大豆食品、野菜などからほとんど摂れないもので、ぜひとも摂ってほしい栄養素を紹介します。それは「ビタミンD」です。日本ではまだマイナーですが、ビタミンDは現在、世界的に大きな注目を集めています。

ビタミンDが注目を集めている理由は2つあります。1つは、これまで知られていなかったビタミンDの働きが明らかになったこと。2つ目は、ビタミンDが不足している人が川国的に増えてきたことでー。

ビタミンDの機能として昔から知られていたのは、カルシウム、マグネシウム、リンといった骨をつくるミネラル分の吸収を助けるという働き。とくにカルシウム代謝にとって、ビタミンDは欠かせない栄養素。ビタミンDが極端に不足すると、カルシウムのみならず、カルシウムとともに骨を構成しているマグネシウムやリンも欠乏します。成長期の子どもがビタミンD欠乏症になると、骨の強度不足などで背骨や四肢の骨が変形する「くる病」という怖い病気に、成人では「骨軟化症」になります。

そして近年わかったことは、ビタミンDにはホルモンのような作用があり、免疫反応全体をコントロールする働きがあるという事実。ビタミンDが不足すると免疫反応が正常に作用しなくなり、花粉症やアレルギー、関節炎といったいわゆる現代病にかかりやすくなります。

ビタミンDが足りていない

現代人に花粉症やアレルギーが増えている一因は、潜在的なビタミンD不足にあります。

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2010年版)』によると、ビタミンDの摂取目安量は、成人で男女ともに1日5・5座。実際の成人男性のビタミンDの摂取量は8・29、女性は6・9%ですから、表面上は足りています。しかし、この基準はミネラル代謝に必要な量から決められたもの。ビタミンDの1あたりの摂取上限量は8ですが、免疫反応を正しく働かせるには、上限値ギリギの1日のビタミンDが必要です。ちなみにビタミンDの単位としてかつてはIU(国際単位)が用られていました。現在では国際的に座に統一されましたが、まだIUを使う場合もあります。その場合は、1=gIUで計算してください。

ビタミンDはアンコウの肝、シラス干し、イワシの丸干し、キクラゲ、シイタケといった食品に含まれています。いずれも毎日のように食べる食品ではないので、通常の食事だけだと7~8照摂るのがやっと。毎日の姫摂るのは大変です。

ビタミンDが不足しているもう1つの理由は、日本を含めた先進諸国では皮膚がんの発生や日焼けを避けるため、日光浴が毛嫌いされるようになったこと。

ビタミンは人体でつくり出せない微量な栄養素ですが、ビタミンDは合成できます。皮膚を日光にさらすと、「紫外線B波(UVB)」が皮膚に存在しているコレステロールからビタミンDを合成するのです。そのため、日光浴を避けると体内で合成されるビタミンDが少なくなります。アメリカ人のおよそ2%がビタミンD不足に陥っているという報告もあります。

スイスの小説を原作とした日本の名作アニメ『アルプスの少女ハイジ』にクララという少女が出てきます。クララは脚が不自由で車椅子に乗っています。

クララは工業化が進んだドイツの大都市フランクフルトから、ハイジたちが暮らすスイス・アルプスへとやってきます。そしてある日、ハイジと口論になったクララが思わず立ち上がるシーンがあります。驚いたハイジが放った「クララが立った!」という言葉はアニメファンの間では名台詞として知られています。

ハイジの物語の舞台は2世紀末のヨーロッパ。工業化が急激に進んだドイツでは大気汚染が激しく、ビタミンDの合成に必要な紫外線B波が届きにくい環境でした。とくに大気汚染がひどかった大都市フランクフルトで育ったクララはビタミンD不足が疑われるわけですね!